【BOOK】『バウルを探して』

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「私が好きな本です」

和田靜香さんがそういうなら、いい本なのだろうくらいの気持ちで手に取りました、ぐらい私が自分では選ばない本でした。

ここがよかった、あそこがよかったと書けばよいのでしょうが、あまりそういう本ではないような気がします。そして、題名に「バウルを探して」とあるからといって、これを読んでバウルを知ろうとか、バウルについてなにかわかるとか、そういうことは期待しない方がよいと思います。

それでもこの話がこれほどしみるのは、バウルを探すことは古今東西、ずっと行われてきたことで、人が生きていくうえで、深いところでつながっているからだと思います。バウルの話はきっとどの時代でもどの場所でもわかる人がいる話だと思います。バウルを探すためにバングラデシュまで行く必要がないとわかるのは、バングラデシュまで探しに行ったからです。

最後に、ある方への手紙があとがきの代わりにあります。
本文を読み、その手紙を読み、その後に巻頭の写真集を見返すと、川内さんたちがバウルを探した旅を皮膚のもう一枚下で感じます。解説者は、この手紙から読んだらばよいと書いていますが、全てを読んだ後でないと、この手紙の手触りはわからないと思います。

装丁もすてきなので、三輪舎から出版された完全版をぜひ。

■川内 有緒 (著) 中川 彰 (写真)、『バウルを探して〈完全版〉』、三輪舎