いきなり世界各地に巨大な宇宙船が現れます。
さて、どうする、という話なのですが、宇宙船や宇宙人が出てきた時、大きく2つのパターンがあります。
1つは宇宙人が地球を侵略する悪者の場合。
問答無用で戦闘シーンが続きます。
もう1つは宇宙人が友好的な場合。
『メッセージ』は後者です。
最後は、「SFなので、そういうことがあるのなら、もうそれでいいです」なオチで解決するのですが、そんなことがどうでもよくなるくらい、おもしろいです。
邦題になったとたんに「なんじゃそら」なタイトルになりがちな洋画ですが、今回の原題『arrivval』に対して『メッセージ』はアリだと思います。
コミュニケーションは発する方よりも受ける方にその本質があると思うからです。
だから、時々「そんなふうに受けとっとったんか~」なことが起こる。
そして「あなたに言ったつもりは全くないんですけど・・・」な人が「これは私宛てのメッセージだ!」と思いこんで話がものすごくいい方向に進んだり、とんでもなくこじれたりします。
『メッセージ』はそんな「この映画が伝えようとしていることは〇〇だ・・・」と思ってしまうようなことが満載で、たぶん後で映画を見た人同士で「あれってこういうことだよね?」と話をしたら、お互いに「そんなこと考えとったんか・・・」となる、期せずしてロールシャッハな映画です。
これを見て印象に残ることは、立場によって、年齢によって、その人ごとにまったく違うものになると思います。
最後、宇宙船を攻撃しようとしていた中国の将軍に主人公のルイーズがあることを言って攻撃中止を説得するのですが、何て言ったのか私にはわかりませんでした。
ルイーズは将軍に何て言った?
このシーンはすごい重要だと思います。
なぜなら、この答えは見ている人をものすごく表す言葉になると思うからです。
と思っていたら、他に見た人から
「え?そう?」
とあっさり言われました。
その人にとってはほとんど記憶にない場面らしく、「他にもっとスゴいとこあったやん」な感じでした。
それぐらい、見る人によって見るところが違う映画です。
それにしても、大学で今一般教養科目がどんどん削減されていますが、これらは絶対に必要だということを改めて思いました。
『メッセージ』official HP
言語学者のルイーズは、宇宙人とコミュニケーションをして何のために地球に来たのか聞けと軍に言われます。
言語学はカネにならないという理由で今の日本で真っ先にリストラされそうな分野ですが、まさかのまさかでルイーズは宇宙人と意志疎通ができるようになり、言葉で軍の攻撃を収めます。
訳の分からないコトに対応するには、いろんな引き出しがないとだめなんです。
今役に立つものが今後も役に立つかどうかはわからない。
今の基準でやっても仕方がないんです。
何の役もたたなさそうだけど、やってみたいと思うことってだれでもあるじゃないですか、それをやったらいいと思うんです。
儲かるとか儲からないとか、認められるとか認められないとか関係なしに。
もしかしたら何かの役に立つかもしれない、でもたぶんたたない。
・・・半分自分に言い聞かせています。
もうひとつ、とっても身につまされたのは、世界12カ所にUFOが現れて、各国がそれぞれ宇宙人とコンタクトしようとするのですが、最初はみんなで協力してやっていたのに、だんだん宇宙人の技術と組んで他の国より優位に立とうと思って、「何でウチが手に入れた情報を他国に渡さなければいけないんだ?」になって、1つ、また1つとホットラインが遮断されてついには回線が全てオフになってしまったことです。
地球の危機なのに、身内で争ってる場合ちゃうで!
と一番心配してくれたのは宇宙人。
みんなで協力して問題を解決しなよ!
とアドバイスをしたのも宇宙人。
宇宙人やでΣ( ̄ロ ̄lll)!!
これってなんなんΣ( ̄ロ ̄lll)??
と思いますが、今の状況をとてもよく表していると思います。
『メッセージ』をまず国連と国会で上映して、全員に感想文を提出してほしいと思いますが、
「宇宙人と組んで他の国より優位に立たないといけないと思います」
とか
「〇〇国は信用できないので、ウチがせっかく手に入れた情報を渡したくありません」
とか
「24時間以内に退却しなければ総攻撃をかけるという判断は正しいと思います」
とか
「加計学園の件から目をそらすことができてよかったと思います」
とか
「無期限に非常事態を宣言できるから好都合です」
とか出てきそうな予感しかしません。
言っとくけど、北海道にもUFO、1機来てたで!
もともとSF大好きですが、こんなの見てしまったら、もっと好きになってしまいます。
小学生でも話のスジは追えると思います。
でも、この話を本当に味わうことができるのは、いろいろな経験をされてきた方だと思います。
なのに、あっという間に公開が終わってしまいそうで、でもこれは絶対に映画館でみた方がいいと思うので、一度でも誰かを、何かを大切に思ったことがあるのならそれはもう絶対におすすめします。